1993・おおぞら13号
9月15日祝日、高架の札幌駅。1階改札の向かいにベンチが漠然と置いてある待合スペースがある。
当時まだ喫煙できる場所だったかもしれない。旭川で風呂を浴びて列車を待っている身分とすれば煙はなるべく浴びたくない。
発車は23時(だったと思う)。まだ1時間近くもあるが、空気が悪いので改札抜けてホームに上がる。
乗車番線の片隅にあるベンチで時間をつぶす。利尻とはまなすはそれぞれ目的地へ発車した後だがあまり鉄道に興味がないので構わない。
待ちくたびれた頃、くたびれた電車が目の前に停車した。「クハ711-902」試作車だ。興味はなくなったとはいえ記憶は定かである。
運転席が乗務員がくたびれて降りてきた。停車時間に一服してまた乗り込んで発車していった。また1人になってしまった。
まもなく列車は小樽方向から入ってきた。旭川方向から入ってきたと感じるこの駅はどうも方向感覚が狂う。
しかし先頭のキハ183-500番台系列は国鉄末期に民営化へのフラッグシップモデルの様な存在であった。それが夜行とはいかに、複雑な気持ちである。
さらに色の違う寝台車を真ん中に2両挟んで、現物を見て少々カルチャーショックを受けた。
指定席に乗り込む。当然の如く普通のリクライニングシートである。数年前の「まりも」指定席よりも劣る。料金だけは特急なのに。
列車は時間通り発車。エンジン音はさほど気にならない。
夜景を楽しむ記憶なく旅の疲れで眠ってしまった。
新得で列車交換。寝ぼけ眼である。
デッキのドアの開閉で目が覚める。列車は帯広に到着していた。停車時間を利用してホームに下りてみる。寒い。改札に足を運ぶ気力はないので車内に戻る。
ヘッドホン式カセットデッキのチューニングをいじる。音楽がかかっている。「心の旅」であった。深夜にチューリップの曲も悪くはない。
「青春の影」でジーンと来る。されにセルフカバーで聞きなれた「さぼてんの花」がかかる。アコースティックなサウンドが寝ぼけた体に染み渡る。
景色が動き始めた。この曲をBGMに帯広を後にした。感動指数が上昇している。
ひたすら闇の中を列車はゆっくりと走る。その間もチューリップの曲は何曲も続く。DJが「いいですね~。」と感慨深そうに話す。また曲が続く。
雑音が入り始めた。そろそろ電波が届かなくなってきた。まもなく池田である。残念ながら今は停車時間はあまりない。
池田を発車。空が青くなってきた。明けの明星であろうか。星が輝いている。
海岸線を走る。青空である。しかし海岸線を離れると霧が濃くなってきた。原生林の中を走っているようだが遠くがあまり見えない。
車内に目をくれる「キハ182-12」のプレート。自分の周りに乗客は少ない。白糠着。斜め後ろに座っていた女性2人組が下車。ついに自分の周りには誰もいなくなってしまった。
しばらく霧の中を走る。並行する国道もよく見えない。しかし時間通り6時釧路に終着。
寝不足は辛い。気動車が原因だと思い込んだ。
数時間が過ぎ、その日宿泊のユースホステルに着く。いろいろな人と仲良くなった。
睡眠をとればこの列車で釧路に向かったこと、この時仲良くなった人のことはとても楽しい思い出になった。
そして「テツ」に逆戻りした自分がいた。 写真は1995年7月にあらためて撮り直しました。
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