眠れない夜 3
関東地方も遅ればせながらまもなく梅雨明けだそうである。いよいよ暑い夏が来る。そして寝苦しい夜も来る。
そんな20年前の今頃の熱帯夜。日が長いこの季節になるとどうしても眠りが浅く、夜明け前に目が覚めてしまう。
また寝ればよいのだが、数年前の感動をもう一度味わいたく起床する。どっちみち試験休み中なので朝寝坊ができる。
部屋の明かりをつけ、周囲の迷惑にならないようにラジオのボリュームを最小に入れる。
残念ながら中央線の急行は前年秋に壊滅状態まで消されてしまった為、興味の対象をまだ行った事のない北の大地に見出した。
というわけで「道内時刻表」が今夜の友である。
午前3時を回っている。上り「利尻」はもうすぐ旭川に着く。「大雪」も上川で下り便と交換し旭川に向かっている。
どちらも寝台車を数両連結し、座席車もリクライニングシートでありグレードが高い。ちなみにラジオもステレオコンポになった。
時刻表を片手にチューニングをあわせながら時間を潰す。至福の時間である。
3時半だ。利尻は旭川で電気機関車に交代し、札幌に向けて発車。複線電化幹線区間であるため、速度が上がる。外は真っ暗。時折踏み切りを通過する。
もうすぐ4時。うっすら外が明るくなり始めた。窓を開ける。部屋に新鮮な空気が入る。しかし夜行に使われている14系客車は窓が開かない。
「利尻」は深川に到着。留萌線や深名線の気動車がアイドリングをして出番を待っているだろう。
深川を発車。「大雪」も機関車を交換してまもなく旭川を発車する。
夜行アルプスに思いを馳せていた3年前ヒットしていた洋楽をかける。
あれから3年が経つ。社会も変わり、周囲の環境も少しだけ自分のアタマの中も変わった。しかし、この悪趣味?だけはやめられない。
朝日がさしこんできた。オーディオのメッキ部に光が反射する。4時半である。朝刊を配達するバイクが走り回る。一日の始まりである。
時刻表に目をやると「利尻」は滝川に、「大雪」は深川に近づいている。
「利尻」は滝川を発車。砂川に向かう。石狩平野の中を一直線に走っているのだろう。
まだ行ったことなき北海道である。残念ながら車窓や車内の様子は想像であり、実感が沸かない。
家から少し離れた幹線道路の交通量が増え始めた。いつもの朝である。
もう5時。「利尻」は美唄を過ぎ、後を追う「大雪」は妹背牛、江部乙を通過し滝川に近づく。いかにも北海道らしい駅名である。
デッキをチューニングに戻せば深夜放送も終わり、朝のニュースが流れる。
ニュースが終わる頃には「利尻」は岩見沢。次は札幌、もう終点である。
そろそろ就寝します。北海道の夜行列車への憧れはますます深まった。
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